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第二次世界大戦を経て、日本経済の高度成長、モータリゼーションの進展、金融の自由化・国際化、人口の高齢化等、保険事業を取り巻く環境が著しく変化したことから、一九八九年から保険審議会において、保険業法のほぼ半世紀ぶりの全面改正に向けた検討が開始されました。
一九九二年には前述の「新しい保険事業の在り方」と題する保険審議会答申がとりまとめられ、保険制度改革の方法性が示されました。
それを踏まえ一九九四年には「保険業法の改正について」と題する保険審議会報告がとりまとめられ、改正法案の骨格が示されました。
更に、一九九五年の国会審議を経て、同年六月に新保険業法は公布され、一九九六年四月に施行されています。
このように、新保険業法は検討開始から、法施行まで七年の年月をかけて論議されたものでした。
業法改正の内容の詳細は次節で説明しますが、一九九四年十月の日米保険協議の合意内容を踏まえて、アメリカ系保険会社の第三分野における既得権の保護のために、新保険業法には55「外国保険会社の経営環境に急激な変化をもたらし、事業の健全性の確保に欠けるおそれの生じることのないよう……」(附則第一二一条)という条文まで加えられたのです。
保険業法改正の最大の項目の一つが子会社方式による生損保相互参入でした。
保険業法改正の全体像が明らかになって以降、生損保会社のうち大手会社を中心に着々と子会社の設立・開業に向けた準備を進めており、一九九五年の新保険業法公布後、子会社の設立や規模を発表する会社が相次ぎました。
一九九四年に決着したはずの日米保険協議が再燃した時期ははっきりしませんが、こうした動きのあった一九九五年十月ごろと思われます。
生損保の大手社が、子会社によってそれぞれアメリカ系保険会社の収益源であった第三分野にも進出しようとしたことに、アメリカ側が改めて危機感を募らせたわけです。
今回の交渉は、本来分野(生命保険分野・損害保険分野)の自由化・規制緩和と、第三分野の既得権保護のための規制維持という、一見相容れない二つのテーマが争点になりました。
アメリカ側の目的である第三分野の既得権保護のための規制維持だけでは、クローバルーズタングートにも反し、日本国内の世論の支持も得られないことから、アメリカ側は本来分野、特に損害保険分野の自由化・規制緩和を主張しました。
すなわち、第三分野の自由化・規制緩和を実施する前に、損害保険分野の自由化・規制緩和を実施すべきであるという論法で、主張を展開したわけです。
交渉は一九九六年にまでもつれ込み、極めて難航しました。
特に、損害保険分野の自由化・規制緩和に関しては、当初は届出制の拡大、純率算定会制度(一六五ページ参照)の範囲の拡大といった程度のものでしたが、自動車保険の通信販売の解禁、算定会制度の改革・自由化とどんどんエスカレートしていきました。
日米保険協議は一九九六年秋に入っても決着しませんでした。
一九九六年八月に生命保険会社が損害保険子会社を、損害保険会社が生命保険子会社を設立し、事業免許を取得、十月から実際に営業を開始しましたが、日米保険協議の影響で、生命保険会社の損害保険子会社は傷害保険の取扱いを、損害保険会社の生命保険子会社はガン・医療保険の取扱いをおのおの制限させられるといった不自然な船出を強いられました。
こうした膠着状態を打開するキッカケになったのが、金融ビッグバン構想でした。
一九九六年十一月、橋本龍太郎首相(当時)は金融システム改革を二〇〇一年までに実施するよう、大蔵大臣と法務大臣に指示しました。
金融ビッグバンは、よく知られている「フリー・フェアーグローバル」の三原則のもとに、金融システム改革を実施していこうとするものです。
今回の金融ビッグバンの基本思想は、市場機能を最大限重視し、市場参加者の自己責任を基礎として、できるかぎり広範囲からの市場への参加を認め、透明性の高いルールのもとで、金融分野を運営しようとすることにあります。
すなわち、いわゆる自由化・規制緩和を実現し、自由かつ公正な金融・資本市場の構築を目指しています。
そのため、従来の事前予防的な行政は極力なくすとともに、個々の金融機関に自発的かつ厳正なリスク管理を求め、経営に失敗した金融機関には、スムーズな形での市場からの退出を求める一方、市場ルールの違反者には、機動的かつ厳格な制裁を加え、市場の信認を確保・維持するという仕組みづくりが求められています。
いうまでもなく、ここでいう市場とは、証券取引市場のようなマーケットだけを指すのではありません。
損害保険でいえば、損害保険市場全体を指し、損害保険会社および保険契約者の双方に対して、自己責任を求められることになります。
従来の制度改革が、段階的・漸進的であったのに対して、今回の金融ビッグバンの特徴は、多数の項目について期限を切って急激に行おうとしていることにあります。
このような従来にない方法をとった背景には、先進諸外国では、金融の自由化、国際化、証券化が急速に進展し、制度面でも激変する金融環境に対応した環境整備が次々と行われ、金融機関も、激変する金融・資本市場への十分な対応を進めるに至っている一方、保険会社や証券会社を含む日本の金融・資本市場と金融機関が、不良債権問題への対応に追われて、国際競争力の面で著しく遅れをとってしまったという認識があります。
金融ビッグバンによって、先進諸外国になんとかキャッチアップし、二十一世紀を迎える二〇〇一年までに、日本の金融・資本市場の魅力宣局めるとともに、わが国の金融機関の競争力を回復し、コーOO兆円というわが国の個人金融資産の流出を防ぎ、わが国の金融市場がニューヨークーロンドンなみの国際金融市場となって再生することを目指しています。
金融ビッグバンを受けて、日米保険協議は大きく進展しました。
すなわち、交渉当局は損害保険分野の自由化・規制緩和に関して大幅な譲歩をすることによって、膠着していた日米保険協議の合意を図ることが可能になったわけです。
一九九六年十二月の日米保険協議の合意内容は多岐にわたっていますが、重要なポイントは次の通りです。
・算定会料率の使用義務を廃止することによって、算定会制度の抜本的改革を図る(一九九八年七月)。
・リスク細分型自動車保険を認可する(一九九七年九月)。
・損害保険会社の生命保険子会社には、医療保険・ガン保険の販売を制限する。
・生命保険会社の損害保険子会社には、傷害保険の販売を制限する。
・こうした激変緩和措置は、損害保険分野の自由化・規制緩和が実行された二年半後(すなわち二〇〇一年一月)に解除される。
いうまでもなく、損害保険事業にとっての最大のポイントは算定会料率の使用義務の廃止でした。
このような経過を経て、いわば外圧によって、損害保険料率は自由化されたわけです。
日米保険協議の合意、および金融ビッグバンに関する橋本首相の指示を受けて、一九九六年十二月に保険審議会総会が開かれました。
保険審議会では、その下部組織として基本問題部会を設置し、①算定会の改革等、自由化措置(損害保険料率の自由化)のほか、②業態間の参入促進、③持株会社制度の導入、④銀行等による保険窓販、⑤トレーディング勘定への時価評価の適用、の合計五つの論点を主要な検討項目として審議することが決められました。
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